黒 澤公人の Project L CALIS

「一次情報ダイレクトアクセス」時代、「検索即閲覧」時代のドキュメンテーションシステムのあり方を考える。

黒澤公人のProject L  CALIS

第9回 CALIS  貴館の希望する図書館システムと作ります。



CALISは、丸善が自社用に開発した技術を、大学図書館システムに向けに販売したシステムである。
その基本的な考え方は、導入館の希望する図書館システムを、構築して収めるというものであり、どのような希望も実現するということ が、特徴である。
15年以上にわたる販売実績から、ユニークな図書館システムが生まれ、ある意味では、図書館システムの水準をあげる刺激になってきた とも、言えるものであ る。
導入時期、開発部隊など、いろいろ条件にのって、多様な図書館システムが登場に、これがCALISだという明言できるものは存在しな い。この多様な、バラ バラなシステムがCALISという集合体のなのである。
そのため、基本的なマニュアルがほとんど存在しない。プログラムも一貫性がなく、各図書館で変更されるため、同一名称のプログラムと いえども、内容が、同 一とはいえない。

このようなシステム構築を実現したのは、システム開発言語の影響によるところが大きい。この開発言語はインタープリター言語で、その 場で、どんどん変更す ることが可能であり、運用しながらも、システムが変更できる柔軟性をもっている。

CALISの貴館に希望する図書館システムを作りますということは、その図書館がどのような図書館システムを構築したいのかという 明確なプランがな いと、その図書館のCALISは、舵取りを失って迷走してしまう。
その意味で、十分明確な方針をもって、導入する必要がある。

そのようなCALISがなぜ、150館以上の図書館に導入されたのか。
それには、多くの図書館が、自館にあった理想の図書館システムを潜在的に欲していたのだと言えると思う。
ICU図書館もCALISを導入しているし、黒澤も図書館システム担当としてCALISに付き合ってきたことので、それだけ思い入れ も多いということを、 差し引いても、CALISの不思議な魅力の存在は否定できない。

その魅力とは、CALISにあるというよりは、導入館の図書館員にあるといっても過言ではない。いくつかの図書館の方と話しながら、 あるとき、中年の小柄 な女性が、CALISの導入に着いて静かに語るとき、CALISは、業者が作ったのではなく、この図書館員たちが、お金を確保し、大 学と説得し、 CALISを業者に作らせたのだと知るのだ。
その人たちをどのような形容がふさわしいのかと思うとき CALIS の至宝、大学図書館界の至宝 という言うべきなのかもしれない と思った.現在、テレビや図書で紹介さ れる世界遺産の、豪華な建築 物、修道院がお城を見ながら、その手の込んだ、考え抜かれた構成に驚嘆するように、ある図書館に、手の込んだ、妥協の許さない、考え 抜かれた図書館システ ムが存在する。
その考え抜かれたシステムは、他のどこにもない唯一のシステムなのである。
そのような情熱を注がれたCALISシステムがあちらこちらに存在する一方、設計図もないまま完成しなかったCALISや、担当者の 気まぐれで迷走し、結 局、ほとんど実用にならなかったものや、要求が高すぎて実現できなかったものも、また、存在するのである。


その意味で、CALISは、職人的システムであったともいえるが、結局のところ、メーカーとしてCALISをシステム管理、プログラ ム管理を放棄したとも 言えるのではないかと思う。メーカーは、図書館システムのプログラムの著作権の所有をいってはいるが、実質的(心情的にともいえる が,メーカー的にシステ ム管理して来なかった)といえる。このことは、バージョンアップや、メンテナンス、エラー情報の収集改善といったメーカーが行わなけ ればならない、開発後 の問題を中途半端にしてきたのではないかと、思う。

そして、そのことが、今後のCALISをどのように発展継承させるのか、明確なビジョンを打ち出せずにいるのではないか。そして、こ の15年以上にわたる システムの存続を、どのように考えるのかは、導入館にとって、難しい選択を迫られることになった。しかし、10年以上一つも図書館シ ステムを使ってきたと したら、一応、導入に成功したといってよいかもしれない。今後、一つのシステムを10年以上使うとは、考えにくい時代になってきた。