シリーズ 21世紀の図書館学 分類
黒沢公人の分類体系21
日本の多くの図書館で採用されている分類体系は、NDCと呼ばれる。
1929年に制定され、現在、9版を数えている。
日本十進分類表 改定年
版 | 出版年 | 間隔 | |
第1版 | 1929 | ||
第2版 | 1931 | 2年 | |
第3版 | 1935 | 4年 | |
第4版 | 1939 | 4年 | |
第5版 | 1942 | 3年 | |
第6版 | 1950 | 8年 | |
第7版 | 1961 | 11年 | |
第8版 | 1978 | 17年 | |
第9版 | 1995 | 17年 | |
世界の知見を、10区分ごとに管理していくという画期的な方法で、体系化した見事な分類体系である。
しかし、その誕生当時から、10区分は埋め尽くされ、科学や技術の発展に対応して、新しい新興知見の前に、古い知見はその領域を分け
渡す必要に生じてく る。この繰り返しで、NDCは成長し、りっぱな分類表となった。
版が改定される度に、既に割り当てられていた分類項目が押しだされ、新興勢力に変わられてしまうという現象が登場した。
しかし、同一番号が版によって違う意味をもつことを、十分管理することは非常に難しい。
短いサイクルで図書を総入れ替えできるのならまだしも、100年、200年と図書を保管管理しようとする図書館では、NDCの改版に
対応することは、難し い。開架の統一性を維持するためには、開館当時定めた、分類番号を維持管理していくことになる。
同一分類番号を、版を変えただけで、違う意味に使うことは、本当に許されることなのか、理解に苦しむところである。
この問題は、10区分分類体系を、その誕生当初から、目一杯、展開することを前提にしてきたため生じている。
分類体系の長期的ビジョンが欠落したまま、運用をされてきたところに問題がある。
大項目や100区分ではあまり変化がないから、問題が小さいのではと思われるかもしれないが、50万冊、100万冊ある図書館では、
細区分の変更でも、それに対応することは大変なことである。
ましては、カード目録だったりしたら、それこそ、膨大な変更作業が発生することになる。
さて、ここまで普及した NDCを止めようということは、分類番号を改定する以上に乱暴である。
さりとて、このまま、改定をしつづけるべきなのかというと大いに疑問がのこる。
(DDCは、1996年までに21版を数えている)
さて、どうするのが良いだろうか。
うまい解決策はない。
私の勤める 国際基督教大学図書館は、NDC6版A を採用している、図書館設立に出ていた版である。
この50年の間に,NDCは7版、8版、9版と版を重ねていったが、この図書館は6版Aのままである.
新規目録は9版でとったらどうかという提案もあったが、全面開架を前提にした図書館には、分離番号の混乱は、命取りでもある。
現実、とても受け入れないことなのである。
21世紀にむけて、豊かな拡張性をもった、分類表は登場しないので、あろうか?
一つの提案は、10進の世界から、11進、12進、13進の世界に拡大していく方法があるかもしれない。
横への拡張が難しければ、下への拡張しか残されていないかもしれない。
それとも、全然ちがう、アルファベットやイロハといったあらたな分類体系の構築が必要であろうか。
新しい分類体系が出現しても、それを、採用するという保障は、どこにもないのである。
それは、日本語を捨てて、新しい言葉をしべらないかというのにも等しい。
そのくらいなら、9版、10版にするほうが、どんなに簡単かということになる。
そう考えると、とんでも無い、無責任の提案のようにも思える。
しかし、NDCを越える 新しい分類体系が必要ではないか。
しかし、たいへんなことだ。